鞄と石油ー素材の選び方が変わるときー


Bags, Built on Oil — And What Comes Next

今この瞬間に流れている時間と、これまで積み重なってきた時間。
その両方を、日常の中で持ち歩いています。
鞄は、石油の塊でもあります。
ナイロンの生地、芯材、形を保つためのパーツや、見えない補強材。  
私たちが日常的に使っている多くの鞄は、石油由来の素材によって支えられています。
それは、悪いことではありません。  
軽さや強さ、そして価格とのバランス、現代のものづくりにおいて、必要な選択でもあります。
ただ、だからこそ、その使い方を、少しだけ見直す余地があるのではないかと思います。

素材の役割は、ひとつではない  

More Than One Role for a Material

革は、使い込むことで表情を変えていきます。  
時間とともに馴染み、持ち手の癖や生活の跡を受け止めていく素材です。
一方で、  水や衝撃から守ることに長けた素材もあります。
バンブレナと呼ばれるこの素材は、竹由来の成分と高機能樹脂を組み合わせたものです。
軽さと耐久性、そして防水性。  
過酷な環境にも耐える性質を持ちながら、日常の中では、さりげなくその役割を果たします。  
自動車のシートにも採用されるほどの強度と堅牢性を備えた素材です。
石油を使わないことはできません。  
ただ、その割合を少しでも見直していく素材です。

使わないのではなく、頼りきらない

Not Less, But Not Dependent

石油由来の素材を、すべて排除することはできません。
けれど、どこに使い、どこで頼りすぎないか。
その選び方によって、道具のあり方は変わっていきます。
守るべきところに使う、過剰にならないように使う。
素材と距離をとるという考え方も、これからのものづくりの一つの形かもしれません。

時間を壊さないための素材

Materials That Protect Time

私たちは、ものではなく、時間〈とき〉を持ち歩く道具をつくっています。
その時間を、育てる素材もあれば、守るための素材もあります。
どちらか一方ではなく、それぞれの役割を見極めながら。
素材を選ぶということは、時間との向き合い方を選ぶことでもあります。

雨の日に、ためらわないという選択

A Choice You Don’t Hesitate on Rainy Days

雨の日、鞄をどう扱うか。
濡らさないように気をつかうのか、それとも、そのまま持ち出せるのか。
その違いは、素材によって決まります。
水を弾くこと。  
形を保つこと。  
日常の中で繰り返される動きに、耐え続けること。
そうした性質は、時間を止めるのではなく、時間を守るためにあるのかもしれません。
雨の日にも、そのまま持ち出せること。  
それもまた、時間を壊さないための、ひとつのかたちです。