内側に、アカを。~A Hidden Touch of Good Fortune~
— 時間を重ねる革と、秘めた縁起 —

2026年は、午年。
年のはじめ、そのことを意識しながら、左馬を飾った。
干支としての馬というより、前へ進むこと、転ばずに歩くこと、そして戻ってこられること。
そんな一年のあり方を、静かに手元に置いておくための所作だった。
左馬は、今年一年、そこに在り続けるものとして置く。
目に入るたび、年の始まりを思い出すために。
ある日、新しい財布を使い始めた。
イタリアンレザーのヌメ革は、まだ少し硬く、色も淡い。
使い込むうちに、ゆっくりと変わっていくことはわかっている。
けれど今は、その「これから」を手にしている段階だ。
ヌメ革は、使う人の時間を、そのまま引き受けていく。
日差しや、手の熱、何気ない所作の積み重ねで、色は深まり、艶が出てくる。
一年という時間が過ぎた頃、最初の淡さは、もう残っていないかもしれない。
けれどその変化は、失われたものではなく、重なってきた時間の跡だ。
いつもの癖で、中を確かめるように開いたとき、内側にアカが見えた。
思っていたよりも、ずっと控えめな色だった。
そういえば、今年はアカがいい、そんな話を、年のはじめに耳にした気がする。
だからといって、それを理由に選んだわけではない。
ただ、開くたびに、そこにその色がある。
それだけのことが、少し心に残った。
派手に主張するわけでもなく、誰かに見せるための色でもない。
内側にあって、使う人だけが知っている色。
財布を閉じれば、また見えなくなる。
財布は、何かを増やすための道具ではなく、受け取ったものを預かるための道具だ。
お金も、カードも、その日の出来事も、いったん中にしまい、必要なときまで置いておく。
内側のアカは、その時間を静かに支えるための、目印のようにも思えた。
左馬は、転ばずに進むことや、富を逃がさないことを意味すると聞く。
それを意識するのは、ほんの一瞬でいい。
大切なのは、一年を通して、そこに在り続けることだ。
部屋の中には左馬があり、手元には, この財布がある。
午年の時間は、置く縁起と、持つ縁起が、同時に流れていく。
財布を開くと、内側にアカがある。
左馬を見ると、今年が午年であることを思い出す。
どちらも、日々の中で、静かに役割を果たしている。
今年の色を、目立たない場所に置いたまま。
派手なことは何もない。
けれど、暮らしの中に、少しだけ整う瞬間がある。
それくらいの距離で、縁起は, ちょうどいい。
部屋の中には左馬があり、手元には, この財布がある。
午年の時間は、置く縁起と、持つ縁起が、同時に流れていく。
財布を開くと、内側にアカがある。
左馬を見ると、今年が午年であることを思い出す。
どちらも、日々の中で、静かに役割を果たしている。
今年の色を、目立たない場所に置いたまま。
派手なことは何もない。
けれど、暮らしの中に、少しだけ整う瞬間がある。
それくらいの距離で、縁起は, ちょうどいい。

