万両と冬の器。― 酒と花を包み込む、スパイラルのしつらえ ―
Manryo and the Vessel of Winter ― A Spiral Setting for Spirits and Flowers ―

冬の気配が深まって
When Winter Grows Deeper
朝の空気がきりりと冷え、窓に触れた指先が冬の訪れを知らせてくれる頃。
この季節は、ものの声が小さくなり、代わりに「静けさの質」が豊かになります。
歳時記でいえば、万両(まんりょう)は冬の象徴。
深い緑と赤い実は、寒さの中でも凛と佇む「冬の灯り」のようです。
酒と花を受け止める、ひとつの器
A Vessel for Spirits and Flowers
スパイラルボトルケースは、ワインだけのための道具ではありません。
日本酒の細い瓶にも、ウイスキーの丸みのあるボトルにも、花の一本挿しにも、その形を変えながら寄り添います。
「酒」と「花」。
どちらも、季節や心の温度をそっと映す存在です。
その両方をひとつの器の中で扱えることは、スパイラルの「余白を持つデザイン」だからこそ。
今日、私が挿した一本の万両は、まるで冬の静かな舞台に立つ役者のようでした。
万両の赤が呼び起こす冬の「間(ま)」
The Red of Manryo and the Quiet Space of Winter
黒革の深みに、万両の赤い実がそっと灯ると、空間に「間(ま)」が生まれます。
その景色は、日本酒を注ぐ前の静けさにも似ていて、花を活ける手元の集中にもよく似ています。
酒と花は、どちらも「ひととき」を変える力を持っています。
スパイラルはその間にそっと入り、景色を整え、時間を包みます。
これはもう、「花器」と「酒器」の狭間にある、服部らしい新しい「器の風景」です。
冬の夜に灯る、小さなしつらえ
A Small Winter Arrangement in the Evening Light
寒さが深まると、人は火を求め, 光を求めます。
けれど万両の赤は、火とも違う、「音のしない灯り」のように感じられます。
スパイラルに万両を挿してテーブルに置くだけで、冬の夜の空気が少し柔らかくなる。
酒を注ぐ前の静寂、花を活け終えた後の余白。
そのどちらも、この器は受け止めることができます。
「使う人の〈時間(とき)〉が美しく映える道具」。
服部のものづくりは、そんな時間の風景を大切にしています。
季節を包む「器」としてのスパイラル
The Spiral as a Vessel for the Seasons
冬は、動きが減り、代わりに「内側の美しさ」が育つ季節です。
だからこそ、酒と花がひとつの器に収まる光景は、この季節によく似合います。
スパイラルは、「持ち歩く」ためのケースでありながら,「季節を飾る」道具にもなる。
その二面性が、この冬のブログに深い意味をくれました。
