HATTORI STORY 第3章
〜つくる〜 手と技で、時間(とき)を形にする
~静けさの中で、かばんは生まれていく。~
かばんは、ただ素材を縫い合わせれば完成するものではありません。
そこには、手の動き、道具の音、工房の空気、職人の呼吸──
言葉にならないたくさんの“気配”が重なっています。
服部のかばんづくりは、「手で考え、手で確かめ、手で時間を形にしていく仕事」です。
手は、素材と会話しながら進む
職人の手は、まず素材を触るところから始まります。
革の張り、ナイロンの伸び、布のしなやかさ、同じ素材でも、毎日少しだけ表情が違う。
素材に触れていると、手のほうが先に“今日の機嫌”を感じ取ります。
ナイロンが少し張っている日、布がしっとりしている日、革が柔らかく息をしている日。
そのわずかな変化を、手が静かに受けとめていく。
たとえば、ファスナーをつけるとき、摩擦が強くなるカーブの部分では、生地がわずかにふくらむように寄せてあげる。
その静かな調整が、あとになって開閉のなめらかさや、仕上がりの美しさを守ってくれる。
数字では測れない、この小さな“思いやり”こそが、素材と手がゆっくり会話している時間です。
技は、“急がないこと”から生まれる
服部のかばんは、無駄を削ぎ落とした静かな形をしています.
その静けさを支えているのは、派手さとは無縁の、丁寧な技です。
直線を美しく見せるためにミシンの速度は速くしない、曲線が自然に見えるように、手首の角度を何度も確かめる。
縫い目が乱れないように、体の前で呼吸を整える。
技とは、力強さよりも、「急がず、乱さず、整えること」の積み重ね。
その姿勢こそが、かばんの静かな佇まいをつくり、持つ人の時間を邪魔しない道具へと導いていきます。
仕立てるとは、“未来の時間” まで見つめること
かばんづくりで大切なのは、目の前の形だけではありません。
使われる未来を想像しながら、今日の一針を決めていきます。
毎日たくさん歩く人には、負担の少ない重心を。
荷物が多い人には、時間とともに強さを増す縫い方を。
雨の多い地域では、濡れても形が崩れない仕上げを。
職人の視線は、いつも未来にあります
その人が使う時間の長さ、その人だけの生活の癖、その人が歩く道のりまで想像しながら仕立てていく。
つくることは、「未来の時間にそっと寄り添う準備をすること」でもあります。
静かな手仕事が、あなたの時間を支える
工房に満ちているのは、機械音ではなく、静けさです。
革をそっと押さえる音、糸を引きしめる音、職人が息を整える小さな間(ま)、その静けさの中で、かばんは生まれていきます。
あなたの人生の横で長く寄り添い、時には励ましとなり、時には支えとなるために、服部が大切にしているのは、派手な技術ではなく、あなたの時間を静かに支えるための手仕事。
つくる手があるから、時間を預けられる。
かばんは道具です
でも、それをつくる手には、道具以上の想いがあります。
いい日も、つらい日も、静かな日も、忙しい日も、あなたの時間を全部受けとめて運ぶために、今日も職人の手は、黙々と動き続けています。
あなたが “ものではなく、時間(とき)” を持ち歩けるように。
